zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

阿寒湖 アイヌコタン

2017年の旅

 ここに記すことは、2004年の出来事ではない。2017年8月に北海道を訪れたときのものだ。このときの計画は、結構壮大だった。釧路を起点として、まず阿寒湖に向かう。移動はもちろん自転車だ。阿寒湖をベースキャンプとして、雌阿寒岳を登山する。その後、自転車で移動して、同じように麓でベースキャンプを張り、斜里岳を登山する。そして、同じように羅臼岳を登山するといった計画だった。

 

釧路から阿寒湖への道

 2017年8月11日、釧路へ飛行機で向かった。「たんちょう釧路空港」は、釧路中心部から10キロメートル程離れている。昼過ぎに到着したとき、大粒の雨が降りしきっていた。しかし、北海道に自転車を持ち込んでツーリングするのは、実に10年ぶりであり、気分は高揚していて、雨もさほど気にはしなかった。この日は、市内のホームセンターでガスカートリッジを購入し、内陸へ10キロ程行った山花公園オートキャンプ場で一泊した。雨ということもあってか、キャンプ客は少なかった。

 雨は夜の間ずっと降っていたが、明け方に一旦止んだ。しかし予報によると、また降ってくるらしい。どんよりした天気の中、国道240号線を北上する。最初は平坦だが、徐々に勾配がついてきて、だらだらとした登りになって行く。そして、勾配に呼応するかのように雨が降り始め、雨脚を強めていった。雨のなか自転車で坂を登ることは、想像以上につらい。雨具は当然着用しているのだが、たとえ透湿性に優れた雨具であっても、汗で必ず蒸れる。身体は蒸れて不快に暑くなるのだが、指先と足先は、逆に外気に熱を奪われて冷えてゆく。ひどいときには、寒さで末端の感覚が麻痺する。この日はほぼ、このような状況で、阿寒湖に着く頃にはすっかり疲弊していた。

 

阿寒湖到着

 阿寒湖湖畔に近づくと、軽快なリズムと共に、ビョンビョン唸る聞き慣れない音が響いていた。ここには、「アイヌコタン」という一角がある。アイヌコタンとはアイヌ語で「アイヌの村」を意味する(アイヌ」とは「人」の意味であるから、正確には「人の住む村」である)

 ここは、アイヌの伝統を、現在に伝えるべく、この地のアイヌの人々によって創設されたところである。国道240号線と阿寒湖畔をつなぐ坂道の両側に、アイヌの伝統工芸品を販売する多数の店舗が並ぶほか、アイヌの伝統的な家屋を再現した施設がある。そして最大の目玉は、アイヌ伝統の舞踊、音楽を上演している「阿寒湖アイヌシアター」である。先程のビョンビョン唸る音は、ここから流されているもので、アイヌの伝統楽器の「ムックリ」の音ということが分かった。

 

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アイヌシアターの外観

予定の変更

 明日は早朝から雌阿寒岳に登る予定で、しかも、かなり疲れていたので、そのような施設には目もくれなかった。湖畔にはいくつか入浴できる温泉があり、その一つの「まりもの湯」に入った。昔ながらの銭湯といった趣の温泉で、500円という安価で入浴できる。

 入浴を済ませ、脱衣場で天気予報を確認したのだが、どうやら明日も雨は続くらしい。今日一日で、すでに雨には参っていたので、完全に意気消沈してしまった。そこで、明日は無理せずに、阿寒湖畔を散策することにした。

 

湖畔の散策路

 翌8月13日はのんびりと湖畔を散策した。阿寒湖畔は観光地化されており、先述のアイヌコタンのほかにも、阿寒湖一帯の自然について展示している「阿寒湖ビジターセンター」などがある。午前中はその阿寒湖ビジターセンターを見学した。

 ビジターセンターの裏手からは散策路が伸びている。ビジターセンター近辺は森のなかだが、しばらく歩くと、湖に接近する。ここでは、ポコポコと煮えたぎる泥湯が至るところにあり、自分が火山帯の上に立っていることを実感できる。

 雨は予報通り、降ったり止んだりを繰り返している。ビジターセンターに戻ろうと再び森のなかに入ると、散策路のすぐ脇に鹿がおり、じっとこちらを見ていた。

 

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阿寒湖畔から見えた雌阿寒岳

ムックリ

 午後は、アイヌコタンを散策し、シアターにも入った。ビョンビョン唸るムックリは、竹を加工した楽器で、口元で弦のように振動させることで独特の音を発する。「口元で」 というのがミソで、音を口の中で反響させて、大きな音にしている。作りは簡素で、アイヌで最も普及した楽器であり、シアターの上演でも、度々登場していた。販売もしており、手のひらに収まる手頃なサイズなこともあって、買ってみようかと思ったが、使う機会はないだろうと思い、結局買わなかった。

 

 明日8月14日は予報では曇りで、徐々に天候は回復するという。パッとしない天気だが、昨日今日よりはましである。予報が当たることを願い、早めに就寝した。